日本酒の分類「特定名称酒」
日本酒のラベルには「吟醸酒」や「純米酒」などと表記されていますが、これは一体なんなのか?この謎を解き明かしたいと思います。
日本酒と呼ばれるものは普通酒と特定名称酒に分けられますが、醸造アルコールの添加割合が10%以下の日本酒のうち、麹米使用割合が15%以上のものは特定名称酒と名乗ることができます。使用する原料と精米歩合によって、純米大吟醸、純米吟醸酒、特別純米酒、純米酒、大吟醸酒、吟醸酒、特別本醸造、本醸造の8種類に分けられます。
よく磨いたお米を、通常よりも低い温度で長時間発酵させる「吟醸造り」という製法で作られた日本酒です。醸造アルコールが添加されており、フルーツのような華やかな香りとすっきりした味わいが特徴です。
醸造アルコールを使わずに米と米麹のみで作られた日本酒のことです。シンプルな原料でつくられているので、お米の旨味や風味をしっかりと味わうことができます。
純米酒に近い香りと風味を持ち、しかも純米よりも淡麗でまろやかな日本酒です。本醸造酒も醸造アルコールを添加しています。
用語解説
精米歩合とは
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいいます。精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。
醸造アルコールとは
醸造アルコールとは、でん粉質物や含糖質物から醸造されたアルコールをいいます。
もろみにアルコールを適量添加すると、香りが高く、「スッキリした味」となります。さらに、アルコールの添加には、清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)の増殖を防止するという効果もあります。
吟醸造りとは
吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することをいいます。
普通酒とは
吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」として分類されない日本酒のことです。すなわち、「醸造アルコールの添加割合が10%以下の日本酒のうち、麹米使用割合が15%以上のもの」を満たさない日本酒ということです。
ちなみに「普通酒」というのは通称です。
日本酒を極めるということ
日本酒を極めるというと、思い浮かぶ人がいます。それは元上司(Iさん)なのですが、日本酒に対する知識が半端なかったです。また、プレミアムがついている日本酒を定価で手に入れることに情熱を燃やしていました。仕事より日本酒?と思えるほどの熱心に情報収集をしている姿を見て、極めるとはこういうことなんだな、と感心させられました。
そんなIさんに一番最初に飲みに連れて行っていただいたときに飲んだのが、十四代 本丸でした。ご存知の方も多いと思いますが、十四代 本丸は本醸造です。そのあとに何を飲んだか覚えていませんが、吟醸酒や大吟醸酒を飲ませていただいたと思うのですが、本醸造酒である十四代 本丸が一番おいしかったと記憶しています。ここで大吟醸だから美味しいというわけではないということ知ったわけです。作り方によっては本醸造でも大吟醸並みに美味しい日本酒が作れるということを知ったのは自分にとって大きな経験だったと思っています。
そんな話は20年以上前の話なので、それ以来、いろいろな日本酒を飲んできました。でも正直に言って、日本酒のうまさを理解しているわけはなく、Iさんの膨大な知識をわけてもらいながら、銘柄だけを見て日本酒を飲んできたという、なんとももったいない話です。日本酒のうまさを言葉で表現するのは難しく、私の表現は、「うまい」「苦手」の2種類しかありません。わかりやすくいうと「〇〇 大吟醸だから美味しい」と思い込んで飲んでいたわけです。それではもったいないな、と思って記録を残そうと思ったのも、このブログを始めたきっかけでもあります。
最後にIさんはお金を惜しまず高級な日本酒を飲むのはもちろんですが、カップ酒も普通に飲むんです。このひと味をわかって高い日本酒を飲んでいるのかすごく疑問でした。ちょこっと飲みに行くときなどは300mlの瓶に入った日本酒を飲むのです。先ほど書いたように私は銘柄で決めつけて飲んでいたので、そういうときに日本酒は美味しいと思ったことはありません。イメージで味を決めつけて飲むなんて日本酒に失礼な話です。でも、いまになって思うのは、日本酒が好きな人はどんな日本酒だって好きなんだ、ということです。日本酒にはいろんな味があり、それぞれにうまさがあるはずです。そこを理解しようとしなかった自分をいまは恥ずかしく思うばかりです。日本酒を極めるということは、知識だけではなく、日本酒全部を好きになることなんだと気づきました。
Iさんは退職されてもう何年もたってしまいましたが、年に一度はお会いして飲みに行く間柄なのですが、コロナウイルスの影響でしばらくお会いしていません。コロナウイルスの心配がなくなったら、またお会いして、今度は銘柄ではなく、味について聞いてみたいと思います。
「生酛造り」「山廃」とは
「生酛造り」とは何か、わかりやすく言うと、「自然の力を活用した、昔ながらの日本酒の造り方」です。今回は、その「生酛造り」について説明します。
日本酒の製造工程には「一麹二酛三造り」という言葉があります。蒸米から米麹を作る「麹造り」、米麹に酵母を繁殖させる「酒母(酛)造り」、酒母をベースにして量を増やしながら醪(もろみ)を段階的に仕込んでいく「醪造り」を順番に表現したものです。「生酛造り」はこの中の「酒母造り」の中の話になります。
酒母造りとは、蒸した米と水に麹、酵母、乳酸菌を加えたもので、酵母を培養することによって日本酒の発酵の元になる酒母を造る工程です。
現在では、人工的に作った乳酸菌があるため、それを使うことが一般的になっています。乳酸菌を培養するのにはとても時間がかかるからです。ちなみに人工的に作った乳酸菌を使用した酒母を「速醸酛」といいます。1910年(明治43年)に新しくできた造り方です。
しかし、昔(江戸時代)は人工的に作った乳酸菌はありませんでした。むしろ乳酸菌の存在すら知らなかったはずです。経験の中から雑菌が繁殖しない方法を生み出して、知らずのうちに乳酸菌を活用していたのでしょう。
現代では、あえて昔ながらの方法で自然に乳酸菌を取り入れる方法をとる場合があります。空気中や蔵の壁、天井など自然に自生する乳酸菌を繁殖させて酒造りに使う方法です。具体的には「山卸し」という、舟を漕ぐときに使う櫂(かい)のような道具で、桶の中の蒸し米と麹を2人1組になってすり潰す作業を行い、その際に乳酸菌を取り込みます。このようにしてできた人工的な乳酸菌を添加していない酒母を「生酛」といいます。
つまり「生酛造り」とは、江戸時代に行われていた山卸しを行うことにより乳酸菌を取り入れて酒母を造る方法です。
生酛造りと似た製造方法に、「山廃仕込み」があります。
先ほど書いた「山卸し」という作業は、深夜から早朝にかけて、極寒の中で行う必要があり、大変な重労働です。技術革新が進み、米をわざわざ擂り潰さなくても、材料の投入順序を変えることで、山卸しの作業を省いても、変わらない「生酛」の味わいを造り出すことができるようになりました。
「山卸し」を「廃止」したので「山廃」と呼ばれています。正式名称は「山卸廃止酛仕込み」です。
「生」のつく日本酒の名称
日本酒のラベルに「生」という文字が入っていると、それだけで美味しそうに感じます。普通の日本酒との違いを味わえるのでおすすめなのですが、「生」がついている日本酒がすべて同じかというとそうではありません。今回は「生」のつく日本酒の違いについて説明します。
日本酒の製造工程の中で、「火入れ」という作業を通常2回おこないます。その火入れの回数とタイミングによって呼び方が変わります。
そもそも火入れとは、加熱処理をすることにより、日本酒から酵母菌をなくし、発酵をストップさせる作業のことです。発酵が止まることで、日本酒の味わいを一定に保つことができます。逆にいうと、火入れをしないとどんどん日本酒の味が変化していくということです。
生原酒
火入れをまったくしない、完全な「生」の状態の日本酒です。搾りたての新鮮な香りを味わうことができます。一方で味の変化が速いので、保存状態に気をつけつつ、早く飲み切る必要があります。
生酒
生原酒をろ過し、割水をしてアルコール度数を調整したものです。生酒もまったく火入れをしていないので、新鮮な香りを味わうことができます。
生貯蔵酒
生のまま貯蔵し、瓶詰めの前に一度だけ火入れを行う日本酒です。搾りたての風味を残した日本酒です。生のまま低温貯蔵することにより、フレッシュな風味に加え、まろやかな旨みを感じることができます。
生詰酒
貯蔵前に火入れをした後、2回目の火入れを行わない日本酒です。貯蔵後に割水をするので、雑菌が含まれてしまう可能性はありますが、フラッシュな味わいを楽しむことができます。「ひやおろし」と書かれた日本酒は生詰酒の一種です。
おまけ
「どぶろく」は、日本酒とは厳密にはちがいます。日本酒(清酒)は「米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの」と定義されていますが、どぶろくは「こさないもの」です。
関連ページ:日本酒の製造工程 - 酒ふりーく